2018年 9/3(月)〜9/9(日)
夏の後ろ姿を追いながら、秋の入り口へ。
9月のホテルは落ちつきをとりもどす。日中は未だ、夏の名残りの日射しがいっぱいのはずなのに、気持ちは秋に向けて、しっとりと落ち着いた風情を醸し出し始める。四季を持つ私たちの習性かもしれない。
>> PM 5 : 00 ラウンジ <<
音も風景も透き通り始める。
❝ ラウンジでピアノ演奏が始まった。その音色はとても静かで、聞こえてくる会話に溶け込んでいる。弾いているのは、先程、窓越しに誰かと話をしていた様子の彼女だった。鍵盤の上で、優雅に踊る指先の向こうに、彼女を見守っているような一人の男性の視線。彼があの時の会話の相手なのだろうと、ふと思った。❞
2018年 9/10(月)〜9/16(日)
空気が秋色に染まる夕暮れ。
秋の気配がドアの向こうに見え始めると、ホテルでは、急に大人の空気が漂い始める。視覚や聴覚を刺激するものも、シックなものに変わり、聞こえてくる音色も、どこか、ゆったりとした旋律が届き始める。
>> PM 10 : 00 ゲストルーム <<
乾いた空気とロマンチック。
❝ 気付くと、つい考えてしまうパリの空の下で出逢った彼女。ある夜、シガーカッターを差し出しながら、「シガーは男のロマンでしょ?」と、薄暗い照明の向こうで、彼女は微笑んだ。吸い続けていないと、火が消えてしまうシガーが、あの時の彼女と重なってみえた。❞
2018年 9/17(月)〜9/23(日)
一緒に時間を編みあげる。
パーティーや祝宴会に、女性とご一緒することになった時、男性側の礼儀をご存知だろうか。その第一条は、いかにして女性を映えさせてあげられるかに尽きる。その女性の輝きの度合いで、男の側の粋さが計られる。
>> PM 8 : 00 ヴァンケットルーム <<
人恋しいのは、秋のせいではない。
❝「今だけ、酔ってみるのもいい・・・」そんなことを思わせる女性が、側にいた。仕事の打ち上げの開放感からなのか、明日から顔を合わせない寂しさなのかは分からない。ある目的に向かい、お互いに闘ってきた仲間との別れ時には、何処か不思議な連帯感が生まれてしまう。そんな彼女のグラスについた口紅からも、同じ空気が漂ってきた。❞
2018年 9/24(月)〜9/30(日)
時は流れ、ホテルは時間を積み重ねる。
季節が移り変わる時の空気の流れは、肌で感じてこそ、秋の醍醐味ではないのでしょうか。自然界が呼吸しているということを感じられるのも、ホテルはいつも、ひとつところに佇んでいるからに他なりません。
>> AM 11 : 00 フロント <<
言葉以上に伝わる気持。
❝ 先ほど、チェックアウトした方の忘れ物。連絡を入れると、慌てる様子もなく、「すまないね」と声がやわらかい。5分ほどして、戻ってきた男性は、軽く会釈し、サングラスを受けとると、私に握手を求めた。その手には、チップという名の気持が 、代わりに置かれていた。❞